ヤマザキパンに見る、企業のオウンドメディアの重要性

ヤマザキパンが、自社サイトでカビの調査結果を公開

ヤマザキパンのWEBサイトに「パンのカビ発生メカニズムと保存試験の結果について」というコンテンツが、アップされています。これは、企業のオウンドメディアの活用例として、とても興味深いものです。

「パンのカビ発生メカニズムと保存試験の結果について」という見出しどおり、このページでは、

「なぜパンにはカビが生えるのか？」
「どんなカビが生えるのか？」
「食品添加物とカビ発生の関連性は？」

などの素朴な疑問に答えています。また、ヤマザキパンの製品と他社製品のカビ発生試験の結果も合わせて公開しています。

一見、「パンに生えるカビ」に関する知識を提供しているだけに見えますが、実際には、オウンドメディアを使った信頼回復対策、誹謗・中傷対策になっています。

オウンドメディアで、風評に反論

『ヤマザキパンはなぜカビないか ― 誰も書かない食品＆添加物の秘密』（渡辺雄二・著／緑風出版）という本が出版されているように、俗にいう「トンデモ本」と呼ばれているエセ学問を根拠としたウワサはネット上でまことしやかに流布しています。

“ヤマザキパンは、食品添加物を使っているからカビが生えないらしい”
“ヤマザキパンが使っている食品添加物には発がん性があるらしい”

といった具合です。

カビについての詳細なコンテンツは、こういったウワサに「反論する」という意味合いを持っています。心ある人が見れば、そうした「トンデモ本」と比べて、どちらが客観的かつ誠実なデータを提供しているかは一目瞭然です。

しかし、主婦層やネット民など、こうしたデマゴーグに不安を煽られる層も少なくありません。

こういう中傷被害を受けた場合、企業にはこれまでなかなか積極的に反論する機会がありませんでした。かえって、週刊誌などの媒体にセンセーショナルに取り上げられるのがオチです。

オウンドメディアを活用して、適切な情報発信

自社のオウンドメディアが、これまで難しかったこの手の中傷への反論を可能にしました。
情報を発信することによって、企業も対抗策をとることが出来るのです。私が想定しているのはWEBサイトですが、パンフレットや、パッケージなどに、安全への取りくみをアピールすることも出来るでしょう。

自分たちを守ることもさることながら、商品を買ってくれているユーザーに安心感を醸成することにもつながります。顧客とのつながりを守るために、オウンドメディアは重要な役割を果たしてくれます。

余談ですが、今年、関東を襲った記録的な豪雪の中、談合坂SAで立ち往生している人たちに、ヤマザキパンのドライバーが、パンを無償で配ったという話がありました。そのニュースは「神対応だ」などとSNSで拡散されましたが、ヤマザキパンからのコメントは、「現場のドライバーの判断だった」と控えめでした。

この辺りの情報発信のさじ加減は、多くの企業に参考になるのではないかと感じます。
そして、情報を理解できる人は、そのメッセージを正しく受け取る事ができます。その人達が、まさにロイヤルカスタマーになるわけです。

情報発信によって、身を守る

現代は、インターネットの普及によって、情報発信のコストが劇的に安くなったと言われる時代。個人も企業も情報を自ら発信することが容易になりました。

それは、多くの場合、自己実現や企業の顧客獲得などの文脈で語られることが多いのですが、一方で、ヤマザキパンの事例のように、自らの身を守るためにも情報発信は有効です。

最近では、大手企業にオリジナルデザインを盗作された個人作家の方が、顛末をブログに書くことによって、ネット上に拡散し、企業から謝罪を勝ち取ることが出来ました。これまでなら泣き寝入りになったことでしょう。

また、2012年ミス・インターナショナル世界大会グランプリの吉松育美さんが、自身のストーカー被害を刑事告訴と民事訴訟を起こした詳細を、やはり自身のブログに公開し、大きな反響がありました。

吉松さんの場合は、自前のサイトではなく、ブログサービスを利用したため、相手の弁護士の抗議によって、いったんアップした記事が削除されたということもありました。

ブログで経緯を説明し、世論の支持を得るのは有効な方法でしたが、行うなら自分のサイトを使うべきでしょう。他社のサービスでは、この件のように、規約違反等の理由で、正直消されても文句は言えません。私が、Wordpressを使った自社オウンドメディアをおすすめする理由のひとつです。

話が少しそれましたが、誹謗や中傷、犯罪などの災いに、いつ巻き込まれるかわかりません。
その時に、オウンドメディアは力になってくれるのではないかと、期待しています。

山崎製パン | パンのカビ発生メカニズムと保存試験の結果について

吉松育美オフィシャルブログ「Beauty Healthy Happy」